ミロンガのDJは誰だ?
ミロンガを運営するには、会場の手配や広報、飲食の準備なども必要だが、実際にやってみて最も苦労が多いのは選曲(DJ)だと実感している。蓄積した楽曲の中から曲を選び出し、適切に並べる。選曲の好みは個人の嗜好が強く反映し、全員が納得する選曲はあり得ない中で、DJは最適な解を求め、道なき道を探し、ベストを尽くす。選曲の作業は、少なくとも1回当たり数時間かかるし、楽曲のストックを充実するための投資も必要だ。
海外のミロンガに行くと、会場を見渡せる好位置にブースを構え、入場者の様子を見ながらDJが即興で曲を選んでいる光景をよく目にする。そこからは、DJに対する敬意を感じる。一方、日本のミロンガでDJは裏方に過ぎず、スポットライトを浴びることは稀だ。主催者からDJを頼まれ、引き受けている場合も、せいぜい入場料が不要になるくらいで、対価を支払うという話は聞いたことがない。海外に比べて、明らかにDJの存在が軽視されている。
しかし、DJの役割は、単に踊りやすい曲を選び、並べるだけに止まらず、そこに緩急を付け、一本の流れを作り出す創造力が求められる。自らが保有する楽曲を、時代や曲調、歌の有無などから分類し、適切に配置していく戦略性が問われる。
ミロンガで踊る経験が増えるほど、選曲に対する好みが明確になると同時に、良いミロンガの優先順位としての選曲の位置付けが高まることが多い。ミロンガの客質が上がれば、必然的にDJの重要性が高まるし、逆に言えば、ミロンガの客質を高めるためには、有能なDJの存在が不可欠になる。恐らく日本においても、中長期的にはミロンガにおいてDJの地位向上が起きるはずだし、起こらねばならない。
※ミロンガでのDJの教科書としては、「Tango Argentino de Tejas」(英語)が参考になる。
