第1回タンゴDJ会議開催のご報告
サニーさん、Shueiさん、Noriさん、milonguera tomokoさんのTokyo MilongaレギュラーDJ4人が集まり、「第1回タンゴDJ会議」を喫茶室ルノアールニュー新宿3丁目店(東京都新宿区)の会議室で11月2日に開きました。9月に新しいDJ体制がスタートし、2カ月が経ったことから、DJ同士で自由に意見を交換することで、Tokyo Milongaの選曲の質を高めると同時に、それらの情報を発信し、他のミロンガでも参考になればと思い開催しました。午後7時から10時までの3時間、熱い議論を交わしました。
開催の目的を確認した後、まずTokyo Milongaの選曲ルールを見直しました。ヌエボ系はこれまで1または2タンダ(タンダ=似た楽曲を4曲程度集めた1セット)としていましたが、「ヌエボ系は良い曲が少ない」などの意見を反映し、最大1タンダ以内とし、DJの判断で入れないことも可能にしました。また、コルティナ(コルティナ=タンダの終わりを告げ、次のタンダに繋ぐタンゴ以外の曲)は1晩すべて同じ曲で統一してきましたが、パートナーチェンジの機会として浸透してきたことと、選曲の自由度を高めるため、同じ曲に統一する制約を取り払うことにしました。当面は1晩に数曲のコルティナを使い、参加者の反応を見ながら今後の方向性を決めます。続いて、タンダの構成、選曲の技術論、DJのあり方の3部に分けて議論を進めました。
(1)タンダの構成
まず「なぜ1つのタンダを同じ楽団で揃えるのか」という基本を確認しました。タンダのメリットとして、似ている曲を1つのグループにすることで、①最初の曲で踊りたいタンダかどうかを判別できる、②「この楽団では誰々と踊りたい」など踊り相手を選ぶ基準になる、③同じ傾向の曲が続くため、徐々に曲調と踊りがしっくりくる、などの利点があがった。「必ずしも同じ楽団で揃える必要はなく、様々な楽団の似ている曲を集める方法もあるが、非常に労力を要する。また、似ている曲を集めると自然と同じ楽団、さらに同じCDに辿り着くことも多い」という意見が出ました。また、タンダの利点を享受するには、コルティナで踊りたい相手を誘うのではなく、次のタンダが始まってから誘う必要があるが、コルティナの時点で誘う人が少なくないという指摘もありました。
現実にはタンダやコルティナに対して必要ないと感じる参加者もいます。アルゼンチンほどではないにしろ、日本のミロンガにも相当の歴史があり、従来はタンダやコルティナといった概念は輸入されてきませんでした(あるいは輸入されたが普及しなかった)。そこにタンダやコルティナを導入しようとすれば、ある程度の反発は必然的に生じます。たとえば「同じ人と色々な曲を少しずつ踊りたい」というニーズなどもあります。タンダやコルティナの定着・普及には、今後も相当の時間を要することで意見が一致しました。
ひとつのタンダをどう揃えるかについては、4人とも同じ楽団や曲調、年代、録音状態などで揃えていました。揃える作業では「知識よりも感性を優先している」という意見がありました。また、Tokyo Milongaの選曲は「Francisco Canaro(フランシスコ・カナロ)の『Poema(ポエマ)』など有名曲の比率が低いことが一つの特徴として認知されているのでは」との見方がありました。ヌエボ系は、狭く定義すればエレクトロニコ(Tango Electronico)、広く定義すればゴールデン・エイジ(Golden Age、主に1940年代)以降を大雑把にヌエボ系と定義できるかと思います。一部参加者の要望は根強いものの、「踊りやすくて良い曲が少ない」、「特にタンダを作る時には同じ曲調を集めることに苦労している」との話が出ました。
ミロンガやワルツのタンダも同じ楽団で揃えるべきかに対しては、現実問題としてタンゴほど選択できる曲数が多くない中で、「同じ楽団で揃えるのは難しい」との意見で一致しました。特にミロンガは同じ楽団で揃えることが困難なようです。また、「ワルツはタンゴに比べて楽団ごとなどのばらつきが少ない」こともあり、複数の楽団で1つのタンダを作る選択肢を残しておくことは必要となりました。タンゴ、ワルツ、ミロンガの最適な配分は、TTVTTMが2人、TTVTMが2人と拮抗しました(T=タンゴ、V=ワルツ、M=ミロンガのタンダの略)。歌入りの曲とインスト(歌なし)はタンダを分けるべきかどうかでは、分けているDJもいれば、分けていない人もいました。ただ、分けているDJも「インストだけで揃えるのは苦労が多い」ようです。「歌声も楽器のひとつ。個人的に歌ものが好きなこともあり、曲のリズムが明確であれば、歌ものが多くても問題ないのでは」との見方もありました。
タンダ内でいかに起承転結を生み出すかについては、9月末と10月初めの2回にわたってDJを務めてくれたフィンランドのアンティ・スニアラ(Antti Suniala)さんの言葉を引用し、「1曲目で参加者をフロアに引き付け、2曲目につなぎ、3曲目で少し変化を加え、4曲目で満足させる」流れが、退屈せずに4曲を踊ってもらえる工夫のひとつとして紹介されました。また、別のDJは「統一感よりも流れを優先している。最初は徐々にテンポを速めていく方がいいと思っていたが、今はテンポダウンの方がむしろうまく着地できるように感じている」との感想を述べました。いずれにしろ難しいのは同じ曲調を集めながら、そこにどう変化を与えていくかです。
(2)選曲の技術論
音源はオリジナル(WAV形式)にこだわるべきか、MP3などの圧縮ファイルでも問題ないかについては、ほとんどのDJが圧縮ファイルを使っていました。「2つを聞き比べれば違いは分かるが、ミロンガで再生する上では大きな違いはない」ことから、取り扱いが容易な圧縮ファイルに軍配があがりました。また、ゴールデン・エイジ以前の楽曲を使うことによる音質の問題は、1920年代後半以降はなんとか聞けるレベルの曲が多いとの指摘がある一方、「音質以上に曲の単調さに注意を払うべき」との意見が出ました。
コルティナに合う音楽ジャンルは、参加者がタンゴと混同しないことが大前提になります。その上で「参加者に馴染みのある曲の方がいい」、「コルティナは補助役で主役はタンゴ。主役より目立ってはいけない」、「タンゴが水平ならそれと垂直に交わるのがコルティナ。縦横の感覚が明確な曲を選んでいる」などの工夫をしているそうです。
最適な曲間は5秒が標準的でした。ブエノスアイレスのミロンガでは曲間が短いことが多いようですが、「余韻に浸れず、日本人には合っていない」との感想がありました。また、タンダの最後の曲が終わった後は、すぐにコルティナが始まるように曲間を短くしているDJがいました。すぐにコルティナが始まらないと、タンダが終わったのかどうか、席に戻るべきかどうかが分かりにくいための工夫で、他のDJにも参考になったようです。第3部で議論する予定だった「DJのあり方」は、時間切れでほとんど議論できませんでした。
今回は第1回ということでレギュラーDJ4人によるクローズな会議でしたが、第2回はネット上で誰でも参加できる形式で開催する予定です。特に議論が不十分だった「DJのあり方」とともに、DJの人でなくても興味を持ってもらいやすい議題に絞り、自由に意見を交換できる場にしたいと考えています。詳細は決まり次第、改めて掲載します。会議で扱って欲しいテーマや質問などがあればメールを戴ければ幸いです。
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